都市の異文化交流
―大阪と世界を結ぶ―
大阪市立大学文学研究科叢書第2巻
大阪市立大学文学研究科叢書編集委員会編
大阪と世界を結ぶ知の交流。国際シンポジウムの成果と学術交流の現状を報告する。


大阪市立大学文学研究科叢書
第1巻 橋爪紳也責任編集・アジア都市文化学の可能性

第3巻 井上徹 塚田孝編・東アジア近世都市における社会的結合

第4巻 近代大阪と都市文化

第5巻 都市文化理論の構築に向けて

第6巻 文化遺産と都市文化政策

第7巻 都市の歴史的形成と文化創造力

第8巻 塚田 孝・佐賀 朝・八木 滋編 近世身分社会の比較史

第9巻 井上 徹・仁木 宏・松浦恆雄編 東アジアの都市構造と集団性

第10巻 大場茂明・大黒俊二・草生久嗣編 文化接触のコンテクストとコンフリクト

第11巻 佐金 武・佐伯大輔・高梨友宏編 ユーモア解体新書

第12巻 塚田 孝・佐賀 朝・渡辺健哉・上野雅由樹編 周縁的社会集団と近代

ISBN4-7924-0553-X (2004.3) A5 判 上製本 306頁 本体6500円
■本書の構成
第1部 再発見 都市大阪のこころと文化

大阪市立大学文学部創立50周年記念国際シンポジウム
再発見 都市大阪のこころと文化
司会 阪口弘之
◎文学の舞台としての大阪◎ドナルド・キーン
◎魅了する庶民性◎ローラント・シュナイダー
◎上方文化の精神◎山折哲雄
◎難波の寺院と僧侶◎橋本聖圓
◎これからの都市文化創造にむけて◎ディスカッション

大阪における傾城町の成立と性格 塚田 孝(大阪市立大学教授)
拡大する知 木村蒹葭堂−その外国認識を中心に 三浦國雄(大阪市立大学教授)

第2部 海外の日本研究と学術交流の現状

インターナショナル・スクール・シンポジウム報告
海外の日本研究と国際学術交流の現状
司会 阪口弘之
◎ドイツの日本学◎ローラント・シュナイダー
◎ドイツ日本学の新傾向・東欧の日本学◎ユディット・アロカイ
◎ドイツ語圏での日本宗教研究◎イエルク・クヴェンツァー
◎イギリスでの共同研究事情◎アンドリュー・ガーストル
◎フランスの日本研究機関◎ロベール・デュケンヌ

今日のフランスにおける日本研究 ピエール・ラヴェル(大阪市立大学教授)
ロシアにおける日本研究 浅岡宣彦(大阪市立大学教授)
遊びの文化−歌舞伎とテキストの創造 アンドリュー・ガーストル(ロンドン大学教授)/杉井正史訳(大阪市立助教授)
エスニック・マイノリティーのロンドン−夏目漱石のヴィクトリア朝絵画受容と社会進化論 北川扶生子(鳥取大学助教授)
ドイツの俳句文学 ローラント・シュナイダー(ハンブルク大学教授)
インターテクスチュアリティと日本詩歌の修辞法 ユディット・アロカイ(ハンブルク大学助教授)
ドイツの工芸博物館を通してみた日独文化交流−ハンブルクを事例として エヴァ・カミンスキー(ハンブルク大学非常勤講師)
在欧日本古典籍調査報告 金光桂子(大阪市立大学講師)

刊行にあたって
 2003年、大阪市立大学文学部は創立50周年を迎え、それを記念する二つの国際シンポジウムを開催した。本書は、「異文化交流」の視点から催された両シンポジウムの成果をそれぞれの柱に、二部構成で編集したものである。
 第1部「再発見 都市大阪のこころと文化」は、朝日新聞社と共同主催した国際シンポジウムの内容を中心に構成する。国内外の異文化との接触、交流を経て形成された大阪文化の多様性、重層性を歴史的に検証するとともに、そうした大阪文化のもつ普遍的側面に光をあてようとしたものである。
 第2部「海外の日本研究と国際学術交流の現状」は、インターナショナル・スクールと同シンポジウム報告の双方に基づく。インターナショナル・スクールは文学研究科の新しい教育研究組織であり、海外の提携大学から招いた講師との連携により、国際的な教育研究を推進することを目的としている。それらの成果を再構成することで、欧州における日本文化研究史と最前線の研究状況の把握を可能にした。
 文学研究科が2002年より取り組んでいるCOEプログラム「都市文化創造のための人文科学的研究」では、都市大阪の文化のもつ普遍性を抽出し、これを世界的視野の中に位置づけていくことが大きな目的の一つに挙げられる。大阪文化の特色が異文化との交流を通して育まれた重層性にある点に注目する時、異文化理解を前提に推進される海外の日本研究が、大阪文化解明のための有力な視座を提供してくれることは疑いがない。本書は、大阪と世界を結ぶ新たな試みの第一歩である。

※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。