近世大坂と知識人社会
小堀一正著


本書は懐徳堂前に捨てられた子どもへの関心からはじまり、市井の「捨子のゆくえ」で終わる。1章の懐徳堂の成立と展開で、懐徳堂が全国区の学校を志向していた事実を、2章は竹山・蟠桃・江漢を思想史的に考察する。3章では、知識人社会のネットワ−クを旭荘らの日記書簡の解読により解明し、4章で町人文化の光と影に目をむける。近世大坂のひとびとの生活と心性を具体的に描き出すことに終始した著者の社会史的試みの成果であり、近世大坂という独特な地域社会の実像をも浮上させた。


■本書の構成

第1章 懐徳堂の成立と展開
第1節 懐徳堂の成立とその特質
第2節 懐徳堂の展開と中井竹山

第2章 近世後期における「知」の特質
第1節 中井竹山の歴史観 ―その排仏論を中心として―
第2節 無鬼、またはフィクションとしての鬼神
第3節 司馬江漢の画論

第3章 幕末期知識人社会とネットワーク
第1節 幕末大坂文人社会の動向 ―広瀬旭荘と藤井藍田・河野鉄兜を中心に―
第2節 松浦武四郎の手紙 ―幕末情報網の一端―

第4章 町人文化の光と影 ―捨子のゆくえ―
はじめに―西鶴のまなざし
第1節 近世大坂のくらしと文化
第2節 幕府の捨子禁止令
第3節 近世大坂の捨子
おわりに―明治政府の捨子対策




小堀一正(こぼり かずまさ)……1947年富山県に生まれる 大阪大学大学院文学研究科修士課程修了 大阪府立松原高等学校教諭 その後、守口北高等学校、大塚高等学校に勤務。1994年逝去(47歳)



ISBN4-7924-0425-8 (1996.8)  A5 判 上製本 260頁 本体3800円
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。