■新修泉佐野市史 第11・12巻 建築・美術編 かんがい水利編
泉佐野市史編さん委員会編
監修 櫻井敏雄 長田寛康 出田和久


 口絵
 序
第11巻 建築編
 〔建築篇〕
 第一章 泉佐野の社寺建築
 〔美術編〕
 はじめに
 第一章 宗教美術
 第二章 日根対山
 第三章 近代画家
 参考文献一覧
 あとがき
 
第12巻 かんがい水利編
 凡例
 序章 かんがい水利編の意義
 T 泉佐野市域の農業と水利
 U 地域・水系ごとの水利開発史
 V 水利の現況と近年の変化
 W 水利史料
 あとがき
 別刷・大木水利詳細図ほか6点


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ISBN4-7924-0613-7 C3021 (2006.3) A4 判 上製本 346頁 本体13,000円
泉佐野の地域的特色を凝縮
大阪経済大学教授 長田寛康
 『新修 泉佐野市史 第11巻・12巻 建築・美術編 かんがい水利編』は、泉佐野の特色を明確にするために本編とは別に編集された別巻で、最初に刊行された『新修 泉佐野市史 第13巻 絵図地図編』と、本巻と同時に刊行された『新修 泉佐野市史 第9・10巻 考古編・民俗編』の三冊(五巻)で別巻のすべてが揃ったことになる。別巻は、本編の理解を深めるために必要不可欠のものであり、両者を併読して、初めて泉佐野の歴史と文化の全容が把握できる。特に、別巻が扱っているのは、いわゆる文化遺産といわれる分野で、それらは視覚に訴え、皆さんが泉佐野の歴史・文化を直接体感できる世界である。その意味では、文字資料が苦手だという方には、先ず別巻から読まれることをお勧めする。
 泉佐野市域には中世以来の神社・寺院の建築遺構がよく残されていて、大阪府南部の近世初頭の様式・意匠を考える上で重要な遺構が多い。このことを説明するためには、市内の国指定文化財七件のうち建築が六件(うち一件は国宝)も占めているといえば、それで十分であろう。建築編では、一六年にわたる市内の悉皆調査の成果をもとに、古建築はもとより、江戸時代までの神社・寺院建築の全容を解説と図面・写真で詳細に紹介している。なお紙数の関係で民家と近代化遺産は通史編に掲載する予定である。
 美術編は、泉佐野ゆかりの美術で、しかも伝世品を中心に紹介。建築同様一六年にわたる市内寺院の悉皆調査の成果をもとに平安時代から江戸時代の主要な宗教美術と全寺院の主な仏像を掲載。泉佐野出身の画家では、江戸末期に里井浮丘に見いだされ京都画壇で一世を風靡した文人画家日根対山を、近代では西山翠嶂に師事した日本画家小川翠村とのちに創造美術を結成した向井久万を取り上げ、各々新知見にあふれた内容となっている。
 かんがい水利編では、市域全体の水利の概要と水系ごとの水利開発史を概観し、四カ所の事例地区の水利の現況と近年の変化をまとめ、「水利史料」と別刷の詳細図を付載する。かんがい水利慣行は、農村の経済社会構造を特徴づけるものである。関西空港の開港と関連する開発の進行により、耕地をめぐる状況も大きく変化しているこの時期に、歴史的なかんがい水利慣行を記録して、先人たちの農業に関わる知恵や技術を残し、ひいては日根荘の荘園経営の基礎であった農業の実態がわかる意義深い内容である。
※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。