近代大阪と都市文化
大阪市立大学文学研究科叢書第4巻
大阪市立大学文学研究科叢書編集委員会編


都市の社会・景観・文化――その源流から創造へ向けて 

■本書の構成

T 近代の都市社会
明治初年大阪の行政・司法組織――その人的資源の供給源……安竹貴彦(大阪市立大学教授)
近世後期大坂における市場社会と民衆世界……八木 滋(大阪歴史博物館)
関 一の大阪観と市政――近年の都市史研究の成果を手がかりに……芝村篤樹(桃山学院大学教授)
米田庄太郎の社会思想及び新カント派思想の研究……広川禎秀(大阪市立大学名誉教授)
大都市と民族関係……谷 富夫(大阪市立大学教授)

U 大阪の景観と史跡
景観の技術史観 電化・イルミネーション・都市美……橋爪紳也(大阪市立大学教授)
昭和戦前期の大阪における都市美運動の諸相……中島直人(東京大学助手)
「大大阪」時代の都市景観と建築家の役割……酒井一光(大阪歴史博物館)
大阪城・上町台地における文化イベントの展開と史跡・文化財……北川 央(大阪城天守閣)

V 大阪文化の創造
大坂町人と「つくりもの」文化……相蘇一弘(大阪歴史博物館)
上田秋成と大坂の精神……ユーディット・アロカイ(ベルリン自由大学専任講師)
大阪の都市社会と大阪相撲……飯田直樹(大阪歴史博物館)
大阪の新聞による女性読者の組織化……土屋礼子(大阪市立大学教授)



ISBN4-7924-0614-5 C3021 (2006.3) A5 判 上製本 282頁 本体6200円

  刊行にあたって

 大阪市立大学は、都市型総合大学として、都市を学問創造の場ととらえる理念をもち、積極的な取組みをおこなってきた。その最初は、文学研究科教員が中心となったプロジェクト研究「大阪市とハンブルク市をめぐる都市・市民・文化・大学」であり、以後研究報告会などの精力的な活動をつみかさね、2005年には、6分冊からなる報告書を刊行している。

 さらに、2002年、「都市文化創造のための人文科学的研究」が、文部科学省の21世紀COEプログラムに採択された。大学はこれに対し、あらたに設けられた重点研究によって支援を行うこととし、文学研究科の「都市文化創造のための比較史的研究」がこれに採択され、これまで研究会やシンポジウムを継続して開催しつつ研究実績を蓄積し、多数の成果報告書を公刊してきている。

 この二つの研究は、もちろん文学研究科の研究のすべてではないが、しかし文学研究科の現在の研究体制を特色づける研究として位置づけられるべきものである。そして、その成果は大学と文学研究科にとってきわめて貴重なものであるのみならず、よりひろい読者層に提供するべき意味があると考えられた。それゆえ、それら二研究の成果を報告書のみにとどめるのではなく、ひろく世に問うこととしたのである。

 本巻の企画はこのような経緯からはじまり、叢書編集委員会の論議を経て、上記二研究の報告書に掲載された成果を厳選し、まとまりのある主題のもとに一書を編集するはこびとなった。えらばれた主題の第一は上記二研究に通底する都市文化であるが、第3巻が近世社会を中心にしていたこともあって、一方の主題を大阪の近代として、本書の原型が構想されたのである。

 本書を通じて、大阪市立大学の研究体制と文学研究科の研究の一斑がひろく認知されることを望むしだいである。
文学研究科叢書編集委員会
■委員長 中村圭爾
■委 員 石田佐恵子 岸本直文 高坂史朗 小林直樹 松浦恆雄 


大阪市立大学文学研究科叢書
第1巻 橋爪紳也責任編集・アジア都市文化学の可能性

第2巻 都市の異文化交流

第3巻 井上徹 塚田孝編・東アジア近世都市における社会的結合


第5巻 都市文化理論の構築に向けて

第6巻 文化遺産と都市文化政策

第7巻 都市の歴史的形成と文化創造力

第8巻 塚田 孝・佐賀 朝・八木 滋編 近世身分社会の比較史


第9巻 井上 徹・仁木 宏・松浦恆雄編 東アジアの都市構造と集団性

第10巻 大場茂明・大黒俊二・草生久嗣編 文化接触のコンテクストとコンフリクト

第11巻 佐金 武・佐伯大輔・高梨友宏編 ユーモア解体新書

第12巻 塚田 孝・佐賀 朝・渡辺健哉・上野雅由樹編 周縁的社会集団と近代


※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。